言霊として、実体として
西垣肇也樹

SHIBUYA AWARDS 2017大賞作品「決シテ瞋ラズ」

「行クモノ」

西垣肇也樹の作品から、「日本の精神」というスケール感があるテーマに強い関心を持ちました。

筆と墨のみで絵を描く西垣肇也樹の水墨画ですが、自然界に備わる様々な意味を暗示的に表現しています。

狩野派を彷彿させる迫力と高度な描写力への没入感に圧倒され、鑑賞する者は自ずとモノクロームの世界、モチーフに向き合います。

漢字やひらがなで構成されている人間=怪獣は、まさに太古から響き渡ってきた「昔の声」と現代社会の合意で形成された「今の声」を同時に抱え込む言霊の力を思わせます。言葉による思いや主張は、それ自体は実体を持たないですが、主流に立つ現代思想が社会現象として姿を表せば、それに強く疑問を呈し打ち破ろうとする彼の思い(自我)が作品として実体を持ち始めたのではないでしょうか。

また、本来禅の象徴である水墨画の山水の中に、怪獣を描き起こすことで、<無我>と<自我>の対決を、最高の舞台で表しているのかもしれません。

独自な自然環境と歴史に根を持つ「島国」気質に惹かれつつも、何かしらの欠如を見つめている西垣の発信には意味があり、そして多くのカルチャーに反響を呼ぶと信じます。

HP http://www.sumarepi.jp/art/

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